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小泉郵政民営化 その3:早急な民営化を望んでいる者達

情報を集めていましたが、考慮すべき事柄が多すぎてまとめることができず、間が空いてしまいました。選挙後にアップすると意味が多少薄くなるので、短めになんとかまとめたいと思います(笑)。ネオリベのことについてよく知っている人にはあまり価値のない内容になると思うのでスルーしてください。

その1:郵政民営化法案そのもの
その2:小泉首相周辺の人物、その政治手法とメディア

その3:早急な民営化を望んでいる者達

「その2」でも少し書いたことだが、この度の「小泉郵政民営化案」に賛成して、たった2年を待つことができず、何としても今すぐこの法案を通したいと思っている者達で目立つところを、まず単刀直入に挙げたい。
竹中大臣、自民党新人落下傘候補(その2で挙げた財務省出身や外資系金融機関出身者)、ホリエモン、ファンドマネ-ジャ-、アメリカ全般(政府・マスメディア・金融機関・投資家)、などなどたくさんある。アメリカは特に強く日本の郵政民営化を望んでいる。

こういう人たちに共通する価値観というのは、新自由主義(ネオリベラリズム:以下ネオリベ)だ。アメリカにおいては他国と「リベラル」の意味合いが違うことや、似て非なる「リバタリアニズム」なる言葉もあるので誤解されやすい。単純に言えばネオリベとは「市場原理を絶対だとする経済思想またはその思想の信奉者」のことである。

小泉構造改革というものは、この思想を元にしている。市場は、万能であり絶対であるという信念だ。今回の「郵政民営化」もこれに基づいてのものだ。「なぜ民間では郵便事業はできないのか?国がやる必要があるのか?」と首相が連呼しているので、ほとんどの人は感覚的に首相の立ち位置を感じることが出来るだろう。私もおおやけの事業は無駄も多いと思うし、効率化することは必要だと考える。

しかしだからといって「ただちに民営化すべき=ネオリベは正しい」ということは絶対に言えない。もちろん「ネオリベは正しくない」ということも言えない。市場というものは、うまく機能すれば効率化や機会の平等などを促進するが、「市場の失敗」という言葉もあるように、不平等を拡大したりマイナスに作用することも当然あり、万能ではないわけだ。一応一例を挙げておくと、ニュージーランドでは郵便局の民営化に失敗した。民営化の結果起こったことは、配達日数が伸びた、配達の標準が局留めになってそれ以降の各家庭への配達は別料金になった、などである。1万通DMを出すような企業にとって郵便の単価は下がったが、個人の1通の単価が相対的に高くなるというのは、市場原理である。市場原理によって「不利益変更」が起こったわけである。ネオリベ路線は「貧富の差を拡大する」「少数の勝者と多数の敗者の構造を作る」と言われる基本の部分である。結局ニュージーランドでは、郵便局は国営に戻った。ちなみに、日本に郵政民営化を数年来強行に求めているアメリカの郵便局は国営だ。世界的郵便組織に所属している190カ国のうち、完全民営なのは1桁だ。

ともかくこのネオリベ路線は市場という不確定要素の存在が前提のため「絶対に良い」とは絶対に言えないわけだ。それにも関わらず、細かい説明をせず民営化さえすれば日本が良くなるかのごとく主張する首相と応援団に、私が一種の欺瞞性を感じる所以である。

しかし、彼らは「万能では無いが、他の手法と比較するとベター」であると考えて、信念を貫こうとしているはずだ。そこまでは理解できないこともない。ただその後のビジョンが全く示されておらず、実に頼りない。ビジョンといってもそんな大げさなものではなく、具体的な成果となるべき数値を示せ、と言いたいわけでもない。実際竹中氏などは「民営化後のことについては何も言えない」と言っている。言っていることは「郵政民営化は構造改革の本丸」という看板を読んでいるだけだ。私が求めるビジョンというのは、国がどこへ向かうのかの大枠を示してほしいということだ。

目下、このネオリベ路線を進めている代表がアメリカだ。市場原理主義を推し進めている中で、金融至上的な考えも生まれ、その結果、企業の実態価値に比べて株価などが高いと言われている。それと引き替えに企業は、じっくり物作りをするというような中長期的な姿勢が後退し、金融的手段による小手先の市場対策をし、利益を支えるために貧困層やマイノリティなどの安い労働力を活用している。

グローバリゼーションの流れの中でネオリベ的な思想が主流になるのは、ある意味仕方がない。この二つはかなり一致する概念だ。アメリカの主な論調が小泉支持・フランスの主な論調が小泉不支持、ということからも、グローバリゼーションとネオリベの関連性が読み取れる。小泉首相とその支持者達は、日本をこのネオリベの波の中に放り込もうとしている。長期的に見れば、もしかしたらもはやこの流れに逆らうことはできないのかもしれない。ただここでさらに提示できる疑問が、「なぜ急ぐ必要があるのか?」ということだ。どちらかというと多くの日本国民は、金融関連の知識に乏しい。もちろん企業も無防備に近い。それは「ニッポン放送買収騒動」でも明らかだろう。準備不足でもいいから突っこむというのは拙速であると言わざる得ない。

私としては未来の日本の国家像が、今のアメリカのような物作りを捨て去り、金融工学によってマネーゲームに狂奔する社会を目指すということなら反対だ。しかしそれがどうしても避けられないことになりそうだと言うなら、しかるべき準備をし、手ぐすね引いて待っている連中から被害を受けないように対策を立ててからでも遅くはない。市場原理主義の先輩だからといって盲目にアメリカを追随すべきではない。ペリー来航以来、アメリカの真似ばかりしているが、より深い歴史を持つ日本が別の道の可能性をなぜ考えないのか。余談になるが、ペリーといえば当時の江戸時代の日本は、高度なリサイクルシステムや環境への負担などが少ない社会で、現在の高度に産業化した社会に求められている「循環型社会」だった。

日本にとって、ネオリベ的社会への移行に関わる問題は、準備不足ということに加えて日本社会の適性の問題がある。上で述べたように単純に後追いをしているだけでは追いつけないし、さらに大きなことはアメリカとの社会構造の違いにある。これも多少重なる内容になるが、アメリカの労働市場は全く日本とは異なる。アメリカの上流層は全世界から知的な人材が集まってある程度形成されているし、下流層は不法移民なども含めて安い労働力を提供しており、このような特殊な環境がアメリカのネオリベ的社会を支えている。おまけに言語の壁もある(多くの外国人は日本語より英語を勉強する)。

このような様々な条件を考えたら、この無策のままネオリベ的な波に日本が流されてしまうと、「アメリカの51番目の州」になるか、アメリカで競争に敗れた人の受け皿としての「劣化アメリカ・二流アメリカ」ということになってしまわないか。外国人を安い労働力としてどんどん受け入れる必要が出てくるし、そうすると民族・宗教的な社会的軋轢が増加し、現在より治安は悪化するだろうし、台風や地震が起こる度に暴行や略奪が起こる社会に今より近づく。こういうアメリカ的社会が「倫理的に悪である」というつもりはないが、このような社会への移行への第一歩であるという国民の総意がないまま、日本の舵をそちらに切ろうとしているこのような連中に同意することは出来ない。

かなり大きな視点になってしまったが、「小泉郵政民営化」が実現したら必ずこうなるというわけではないが、ネオリベ的社会への第一歩になるだろうということは、「ネオリベ」という言葉を使う人なら誰でも頭の片隅で想像していることだろう。
この説明不足・準備不足の「小泉郵政民営化」を支持する者は、

「現在勝ち組に属する者」か
「勝ち組になる環境を持つ者」か
「勝ち組になると信じているが実力はないただの馬鹿者」か
「自分が相対的弱者になる想像力を持たない者」か
「不安な社会において(根拠は無くても)強力なカリスマを求め、他人に判断を委ねる『自由からの自由(主体的隷属)』を望む者」か
「B層(その2参照)」である。

小泉首相のことも自民党も別に嫌いというわけではないが、「小泉ポピュリズム神輿」を担いでいる「早急な小泉郵政民営化を求めている者達」の自分勝手さや弱者のことを何も考慮しない冷酷さには虫酸が走る。根拠もなく「郵政民営化は日本を良くするためだ」といって自分の金儲けしか考えていない者など論外だ。

「ではどうするんだ?反対ばかりしていたのでは万年野党と一緒だぞ。対案を示せ!」という声が聞こえてきそうだが、それをやるとさらに長くなるので今回は少しだけ。

ネオリベ的「大きな政府から小さな政府へ」という主張はそれなりに説得力がある。官の肥大は誰の目にも明らかな制度疲労だろう。しかしすぐに「Aが駄目ならZだ」という風に考えるのではなく、上で多少触れたように他の道を探してみることだ。スウェーデンのような「高福祉高負担」でもなくアメリカのような「低福祉低負担」でもない、日本にぴったりとした「中福祉中負担」的な光明を、日本人みんなで考えていけば、きっと第三の道が見つかると確信している。これだけコンパクトな国土の中に比較的民度の高い人間がたくさん住んでいるのだから、できないはずがない。

【参考URL】
・用語解説
新自由主義(Wikipedia)
新自由主義
(現代政治用語辞典)

・公式文書
日本国政府への米国政府要望書(駐日米国大使館)

・ニュース
総選挙は首相支持、ワシントン・ポスト紙が社説(読売新聞)
衆院選、自民苦戦の可能性・仏紙(日経新聞)

・HP・ブログ
これでも「郵政民営化」に反対しますか(竹中平蔵日記)
新自由主義の「小さな政府」は古代奴隷社会への退行原理である(世に倦む日日)
小泉郵政解散へ賛成論と反対論まとめ(ブログ時評)
「郵政民営化で350兆円が米国に奪い取られる」というデマ(Irregular Expression)
日本が日本でなくなる日(とくとく 日記)
郵政民営化で350兆円が奪われるか?(1喝たぬき)
米国はイラク戦争で火の車で110兆円を郵貯資金で賄う?(株式日記)
『郵政焦点・総選挙』(付“飾り窓の女”)で何を隠蔽するのか?(愚考三昧)
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by blinkey | 2005-09-03 23:14 | ニュース・社会